コンパスでわかる!皮膚の場所による触覚のふしぎを探検!
皮膚の触覚は場所によって違う?体の秘密を探ってみよう!
私たちの体は、皮膚を通して様々な情報を受け取っています。温度や痛み、そして「触られている」という感覚もその一つです。でも、体のどの場所も同じように敏感なのでしょうか?指先とお腹では、触られたときの感じ方が違うような気がしませんか?
今回の「親子でからだ探検隊」では、身近な道具であるコンパスを使って、皮膚の場所による触覚の感度の違いを探るアクティビティをご紹介します。触覚の不思議を体験を通して学び、私たちの体がどれほど巧みにできているかを感じてみましょう。
アクティビティの目的
この活動を通して、子供たちは以下の点を体験的に学びます。
- 体の場所によって、触覚の感度(どれだけ細かく触られているかを識別できるか)が異なることを知る。
- 皮膚にある感覚を受け取るセンサー(感覚受容器)の分布や、脳での情報処理が場所によって違う可能性があることを推測する。
- 簡単な実験を通して、自分の体の不思議を探究する楽しさを知る。
対象となる学年目安
小学校中学年~高学年
※安全に配慮できる年齢であれば、より低学年でも実施可能ですが、結果の考察は高学年向きです。
準備物
- コンパス: 1本。金属製のしっかりしたものが望ましいですが、安全のため針が尖りすぎていないか確認してください。必要に応じて針先をやすりで少し丸くするか、保護キャップを少しずらして使うなどの工夫をしてください。コンパスがない場合は、安全ピン2本、または先が丸い竹串や割り箸の先端など、2つの点を同時に当てられるもので代用可能です。
- 定規: コンパスの先端の間隔を測るために使います。15cm程度のもので十分です。
- 目隠しできるもの: スカーフやタオルなど、しっかりと目を覆えるもの。
- 記録用紙とペン: 実験結果を記録するためのもの。簡単な表を事前に準備しておくと便利です。
| 実験する体の場所 | コンパスの間隔(mm) | 1点と感じた | 2点と感じた | | :--------------- | :------------------- | :---------- | :---------- | | 指先(腹側) | 例:1mm | ○ | | | 指先(腹側) | 例:2mm | | ○ | | ... | ... | ... | ... | | 手の甲 | 例:5mm | ○ | | | ... | ... | ... | ... |
活動の手順
- 準備: 実験を行う場所を決め、準備物を揃えます。ペアになり、実験する人(実験者)と実験される人(被験者)を決めます。コンパスの先端が鋭利すぎないか確認し、必要であれば安全な状態に加工します。
- 説明: 被験者に、目を閉じるか目隠しをすること、そして皮膚に軽くコンパスの先端を当てることを伝えます。触られた時に「1ヶ所」と感じるか「2ヶ所」と感じるかを答えてもらうことを説明します。
- 目隠し: 被験者は目隠しをします。実験中は絶対に目を開けないように約束しましょう。
- 実験開始(指先):
- 実験者はコンパスの先端を閉じ気味(例えば2mm程度)にします。定規で正確な間隔を測ります。
- 被験者の指先(腹側、よく物を持つ側)の皮膚に、コンパスの2つの先端を同時に、垂直に、ごく軽くそっと当てます。皮膚に跡がつくほど強く押さないでください。
- 被験者は、触られた感覚が「1ヶ所」か「2ヶ所」かを答えます。
- 実験者は、記録用紙に体の場所(指先)、コンパスの間隔、被験者の回答を記録します。
- 次に、コンパスの間隔を少しずつ広げながら、同様の実験を繰り返します。被験者が「2ヶ所」と識別できるようになった「一番狭い間隔」を探します。
- 他の場所での実験: 手順4と同様の方法で、以下の体の場所でも実験を行います。
- 手の甲
- 腕(内側)
- 腕(外側)
- 首の後ろ
- 背中
- その他、興味のある場所(足の甲など) それぞれの場所で、「2ヶ所」と識別できる一番狭い間隔を探して記録します。
- 役割交代: 被験者と実験者の役割を交代して、両方の立場を体験してみましょう。
- 結果の比較と考察: 記録した結果を比較し、体の場所によって「2ヶ所」と識別できる間隔が違うことを確認します。なぜ場所によって違いがあるのか、話し合ったり調べたりしてみましょう。
活動のポイント
- 優しく、正確に: コンパスを当てる際は、必ずごく軽く、2つの先端が同時に皮膚に触れるように注意してください。強く押しすぎたり、片方ずつ触れたりすると、正確な結果が得られません。
- 間隔の調整: 「1ヶ所」と「2ヶ所」の境目となる間隔を探るのが面白い点です。最初は狭い間隔から始め、少しずつ広げていくのが良いでしょう。
- 繰り返し試す: 同じ場所でも、何度か間隔を変えて試してみると、より正確な結果が得られます。
- 記録の重要性: 記録用紙に結果を記録することで、後から比較検討しやすくなります。「指先は2mmで2ヶ所とわかったけど、手の甲は1cmじゃないとわからなかった!」といった具体的な発見に繋がります。
- 声かけ: 「今、何か触ったけど、1つかな?2つかな?」「さっきと比べてどうかな?」など、優しく問いかけながら進めましょう。
安全上の注意点
- コンパスの取り扱い: コンパスの先端は鋭利です。絶対に皮膚に強く押し付けたり、傷つけたりしないように、力の加減に十分注意してください。使用しない時は先端にカバーをするなど、安全な管理を徹底してください。代用品を使用する場合も、先端が尖っていたり、怪我をする可能性があるものは避けましょう。
- 実験者の責任: 実験者は、被験者の安全に常に気を配り、無理強いをしたり、嫌がる場所に当てたりしないようにしてください。
- 清潔な道具: 実験に使う道具は清潔な状態にしておきましょう。
- 目隠しの際の注意: 被験者が目隠しをしている間は、周囲の危険がないか確認し、転倒しないように支えるなど配慮してください。
期待される教育効果
このアクティビティを通して、子供たちは皮膚の感覚機能の奥深さを実感できます。特に、場所によって触覚の「解像度」が異なるという事実は、感覚が全身で一様ではないこと、そして脳が体の各部からの情報を処理する際に、場所によって異なる重要度や精度を持っていることを示唆します。
例えば、指先は物体の形や質感を細かく捉えるために非常に重要な場所なので、触覚のセンサーが密に集まっていたり、脳での情報処理領域が広かったりすると考えられます。一方、背中などは、大まかな接触が分かれば十分なため、センサーの密度が低かったり、脳での処理が異なったりするのかもしれません。
この活動は、単に感覚の違いを体験するだけでなく、「なぜそうなるのだろう?」という探究心を刺激し、私たちの体が環境に適応して効率的に機能していることの一端を理解するきっかけとなります。
応用例や発展的な活動
- 他の感覚でも試す: 温度感覚や痛み感覚など、他の感覚についても場所による違いがあるか、安全な範囲で話し合ってみる。(ただし、これは実験が難しい場合が多いので、調べる活動とするのが現実的です。)
- 感覚受容器について調べる: 皮膚にはどのような感覚を受け取るセンサー(感覚受容器)があるのか、それらは体の場所にどのように分布しているのかを、図鑑やインターネットで調べてみる。
- 脳の感覚野について調べる: 脳の中で体のどの部分からの感覚情報を受け取っている場所(体性感覚野)が、体の各部分とどのように対応しているのか、脳の地図(ホムンクルスなど)を調べてみる。指先や唇など、触覚が敏感な場所ほど、脳の感覚野の面積が広く割り当てられていることがわかります。
- 日常生活との関連: 日常生活の中で、体の場所によって触覚が違うことを意識してみる。例えば、洋服のタグが首の後ろだと気になりやすいけれど、腕だと気にならないのはなぜだろう?など、疑問を持って観察する習慣をつける。
このアクティビティを通して、身近な皮膚にも驚くべき機能や不思議がたくさん詰まっていることを発見し、からだ探検をさらに楽しんでいただければ幸いです。