だまされる目?脳のふしぎな働き!錯視を体験してみよう
だまされる目?脳のふしぎな働き!錯視を体験してみよう
わたしたちが見ている世界は、目が映し出したものをそのまま見ていると思っていませんか?実は、目はカメラのように光を受け取るセンサーの役割をしていますが、その情報を受け取って「何が見えているか」を判断しているのは、脳なのです。脳は目から送られてくる情報をもとに、これまでの経験や知識と照らし合わせて、見ているものを解釈しています。
そのため、時には脳が間違った解釈をしてしまい、「実際とは違うもの」が見えているように感じることがあります。これが「錯視(さくし)」と呼ばれるふしぎな現象です。
このアクティビティでは、簡単な錯視をいくつか体験し、目と脳の関係、そして脳の面白い働きについて探検してみましょう。
アクティビティの目的
- 目が受け取る情報と、脳がそれを解釈して「見える」と感じる情報が、必ずしも一致しないことを体験的に理解する。
- 錯視を通して、脳がどのように視覚情報を処理し、世界を認識しているのか、そのふしぎな働きの一端に気づく。
対象となる学年目安
小学3年生~小学6年生
準備物
- 紙 (A4などのコピー用紙数枚)
- 鉛筆またはペン
- 定規
- (必要に応じて)色鉛筆やマーカー
- (必要に応じて)インターネット環境や錯視図が載っている書籍、印刷物など
活動の手順
ここでは、紙と鉛筆、定規で簡単にできる錯視をいくつか紹介します。
【錯視1:ミュラー・リヤー錯視】
- 紙に定規を使って、長さが全く同じ水平な線を2本描きます。線と線の間は少し開けておきましょう。
- 一方の線の両端に、内側に向かう「くの字」や「矢じり(<>)」のような形を描き足します。
- もう一方の線の両端には、外側に向かう「くの字」や「矢羽(><)」のような形を描き足します。
- 完成した2本の線を見比べて、「どちらの線が長く見えるかな?」と尋ねてみましょう。
- 次に、定規を使って実際に線の長さを測ってみましょう。どうでしたか?見た目と実際の長さが違うことに気づくでしょう。
【錯視2:色の対比錯視】
- 薄い色の紙(例:水色や黄色)を用意します。もしなければ、白い紙に薄く色を塗っても構いません。
- 同じ明るさ、同じ色の小さな四角形を2つ描くか、紙で切り抜きます(例:薄いグレーや同じ色の濃い色)。
- 一方の四角形を薄い色の紙の上に置きます。
- もう一方の四角形を、別の濃い色の紙や、黒い紙の上に置きます。
- 同じ色のはずの2つの四角形の色を見比べてみましょう。「どちらの四角形の色が明るく見えるかな?」と尋ねてみます。
- 錯視が起きている場合、周りの色の影響で同じ色が違って見えるはずです。
※インターネットで「錯視画像」と検索すると、様々な種類の錯視を見つけることができます。いくつか試してみるのも良いでしょう。(例:「チェッカーシャドー錯視」「エビングハウス錯視」など)
活動のポイント
- 子供たちが「あれ?」「なんで?」と不思議に思う気持ちを大切にしましょう。
- 「目が見たものは同じだけど、脳が違うものに見せているんだね」など、目と脳の働きの違いに触れる声かけをします。
- なぜそう見えるのかの詳しい説明は難しくても、「脳は周りのものと比較したり、これまでの経験から推測したりして、見えているものを決めているみたいだよ」といった、脳の解釈の働きに触れると良いでしょう。
- 「みんな同じように見えるかな?」と尋ねて、見え方の個人差について話してみるのも面白いかもしれません。
- いくつかの種類の錯視を試すことで、様々な「脳のだまされ方」があることを体験できます。
安全上の注意点
- 特定の錯視図を長時間、凝視しすぎないように注意しましょう。目の疲れを感じたら休憩するように伝えてください。
- もしインターネット上の錯視図を見る場合は、画面との適切な距離を保ち、連続して見すぎないように声かけをしてください。
- 体調が優れない時は無理に行わないようにしましょう。
期待される教育効果
このアクティビティを通して、子供たちは自分が見ている世界が、単純に目の働きだけで成り立っているのではないことに気づきます。脳が積極的に情報を処理し、解釈することで「見る」という行為が成り立っていることを体験的に学びます。
また、見た目が全てではなく、時には脳が「だまされる」ことがあると知ることで、物事を鵜呑みにせず、「本当かな?」「なぜそうなるんだろう?」と疑問を持つ、科学的な探究心や批判的思考の基礎を育むきっかけにもなります。
応用例や発展的な活動
- 今回紹介した以外の錯視(不可能図形、運動錯視、だまし絵など)を調べて、実際に見て体験してみましょう。
- どうしてその錯視が起きるのか、簡単な解説を調べて、自分なりの言葉で説明してみましょう。
- 視覚だけでなく、聴覚や触覚にも「錯覚」があることを調べてみましょう(例:同じ音なのに違う高さに聞こえる「 Shepard tone」、手が勝手に動かされているように感じる錯触など)。
錯視の体験は、わたしたちの脳のふしぎさ、面白さを身近に感じられる素晴らしい機会です。ぜひ親子で、あるいは授業で、脳の探検を楽しんでみてください。