ごはんを食べるとなぜエネルギーになるの?消化のふしぎを探検!
ごはんを食べるとなぜエネルギーになるの?消化のふしぎを探検!
私たちは毎日食事をして、体に必要なエネルギーを得ています。ごはんやパン、お肉や野菜など、様々な食べ物を口にしますが、それらはそのままの形や大きさで体の中で使われるわけではありません。では、食べたものは体の中でどうなっているのでしょうか?
実は、食べ物は口からお腹の中を通る間に、体が吸収しやすい小さな粒に分解されます。この一連の過程を「消化」と呼びます。消化された栄養素は、血液に乗って全身に運ばれ、体が動くためのエネルギーになったり、体を作る材料になったりします。
今回は、ごはんなどに含まれる「デンプン」という栄養素が、体の中でどのように消化され始めるのかを体験的に学ぶアクティビティに挑戦してみましょう。特に、私たちの口の中にある「唾液」のふしぎな力に注目します。
アクティビティの目的
- 食べ物が体内で消化される過程の一部(デンプンの分解)を体験的に理解する。
- 唾液に含まれる酵素(アミラーゼ)がデンプンを分解する働きがあることを観察を通して学ぶ。
- なぜ食べ物をよく噛むことが大切なのか、科学的な視点から考えるきっかけを得る。
対象となる学年目安
小学3年生〜小学6年生
準備物
- 炊いたごはん:少量(茶碗1/3杯程度)
- 水:200ml程度
- 透明なコップまたは試験管:3〜4個
- スプーンまたはマドラー:2〜3本
- スポイト:1〜2本
- ヨウ素液(うがい薬やイソジンなど、ヨウ素を含むもので代用できる場合もありますが、実験用ヨウ素液が最も適しています):少量
- 唾液:少量(きれいな容器に唾液を少し貯めておく)
- (または)市販の液体アミラーゼ洗剤や消化酵素剤(デンプン分解酵素を含むもの):少量(取り扱いには十分注意し、製品の説明に従ってください)
【注意】 ヨウ素液は衣服につくと色が落ちにくく、飲むと危険です。必ず大人が管理し、子供が直接触れないように注意してください。
活動の手順
- デンプン液を作る: 炊いたごはんをコップに入れ、水を加えます。スプーンなどでごはんを丁寧につぶしながらかき混ぜ、どろどろとした白い液体(デンプンを溶かした水)を作ります。大きな粒は取り除いておきます。
- コップに分ける: 作ったデンプン液を、別の透明なコップに3つに均等に分けます。それぞれのコップにA、B、Cなどの目印をつけておくと分かりやすいです。
- 比較対象を用意する (コップA): コップAには何も加えません。これがデンプン液そのままの状態を調べるための比較対象となります。
- 唾液(またはアミラーゼ液)を加える (コップB): コップBに、用意した唾液をスポイトで数滴加えます。または、市販のアミラーゼ液を使う場合は、製品の指示に従い少量加えます。スプーンで軽くかき混ぜます。
- 時間をおいて変化を観察する: コップAとコップBを並べて置き、5分、10分、15分と時間を追って、見た目の変化があるか観察します。見た目には大きな変化がないかもしれません。
- ヨウ素液で反応を調べる (コップA): 15分ほど経過したら、まずコップAにヨウ素液を1〜2滴加えて、軽くかき混ぜます。何色になるか観察しましょう。
- ヨウ素液で反応を調べる (コップB): 次に、コップBにヨウ素液を1〜2滴加えて、軽くかき混ぜます。コップAと比べて色の変化に違いがあるか観察しましょう。
- (応用)コップCで時間による変化を見る: コップCにも唾液(またはアミラーゼ液)を加え、さらに長い時間(30分〜1時間など)おいてからヨウ素液を加えてみます。コップBとの色の違いを観察すると、時間とともに変化が進むことが分かります。
活動のポイント
- ヨウ素反応の確認: 実験の前に、ごはん粒や片栗粉などにヨウ素液を垂らし、青紫色になることを子供に見せておくと、「デンプンがあると青紫色になる」という基本的な知識が入りやすくなります。
- 比較の重要性: コップA(唾液なし)とコップB(唾液あり)を必ず比較させることが、唾液の働きを理解する上で最も重要です。「同じデンプン液なのに、どうして色が違うのかな?」と問いかけ、違いに気づかせましょう。
- 時間の経過: 唾液によるデンプンの分解には時間がかかります。すぐに結果が出なくても焦らず、しばらく待つことが大切です。
- 唾液について話す: 「この唾液は、みんなの口の中にあるものと同じだよ。食べ物を柔らかくするだけでなく、こんなふしぎな力も持っているんだね」と話すと、自分の体への関心が高まります。
- 「消化」と「酵素」: 子供の理解度に合わせて、「消化」とは食べ物を体に吸収しやすい形に変えること、「酵素」とは体の中で様々な変化を手助けする特別な物質であることなどを、簡単な言葉で説明しましょう。
安全上の注意点
- ヨウ素液の取り扱い: ヨウ素液は絶対に飲まないでください。皮膚や衣服につかないように、大人が責任を持って取り扱い、子供の近くに置かないでください。実験後は安全な場所に保管するか、適切に廃棄してください。
- ガラス製品: ガラス製のコップや試験管を使用する場合は、破損しないよう十分に注意してください。プラスチック製のものを使うとより安全です。
- 唾液の使用: 他の人の唾液を使用することは避け、自分の唾液を使用するか、市販のアミラーゼ液を使用してください。衛生面にも注意しましょう。
- 試食の禁止: 実験に使った液体は、たとえ唾液を加えたものであっても絶対に口にしないでください。
期待される教育効果
このアクティビティを通して、子供たちは、私たちが食べたごはんのデンプンが、口の中で唾液によって分解され始めるという、消化の最初のステップを体験的に理解することができます。ヨウ素液の色の変化という目に見える結果を通して、唾液という身近なものが持つ科学的な働き(酵素による分解)に気づき、身体の仕組みの面白さを感じられるでしょう。また、観察と比較を通して科学的な探究心を育むことにもつながります。この体験は、「なぜよく噛んで食べると良いの?」といった日常生活での疑問や、「食べ物は体のどこを通るの?」といった消化器系への興味へと発展していく足がかりとなります。
応用例や発展的な活動
- 温度を変えてみる: 唾液を加えたデンプン液を、温かい場所(人肌程度のお湯につけるなど)と冷たい場所(氷水につけるなど)に置いて、それぞれの変化の速さを比べてみます。酵素の働きが温度によって変わることを学ぶことができます。
- 他の食品で試す: パンやうどんなど、他のデンプンを含む食品をすりつぶしてデンプン液を作り、同様の実験をしてみます。
- 模型で経路を学ぶ: 消化器系の簡単なイラストや模型を見て、口から始まり、食道、胃、小腸、大腸へと食べ物がどのように運ばれ、それぞれの場所でどのような消化が行われるのかを学びます。
- 栄養素について調べる: デンプンの他に、タンパク質や脂肪などの栄養素が体でどのように消化・吸収されるのかを調べてみます。
このアクティビティを通して、子供たちが自分の体のふしぎに興味を持ち、健康な生活を送るための学びにつなげてくれることを願っています。