どこまで見えるかな?自分の視野を測ってみよう!
視野のふしぎを探検しよう!
私たちの目は、見たいものだけでなく、その周りの様子も同時にとらえています。この「同時に見えている範囲」のことを視野(しや)と呼びます。車の運転中に信号や標識を見るだけでなく、周りの歩行者や自転車にも気づけるのは、この視野があるおかげです。また、スポーツでボールや相手の動きを追いながら、コート全体の状況を把握するのにも視野はとても大切です。
普段意識することの少ない自分の視野。一体、どれくらい広い範囲を見ることができるのでしょうか?今回の「からだ探検隊」では、簡単な道具を使って、自分の視野を体験的に調べてみるアクティビティに挑戦します。両目で見る時と、片目で見る時で、視野の広さがどう変わるのかも比べてみましょう。
アクティビティ:自分の視野を調べてみよう!
このアクティビティでは、自分が一点を見つめている間に、どこまで横の方が見えるかを体験的に測ってみます。
アクティビティの目的
- 「視野」という目の機能について理解する。
- 自分が一点を見つめている間にも、広い範囲が見えていることを体験する。
- 両目で見たときと片目で見たときで、視野の広さが違うことに気づく。
- 視覚を通して、外界の情報をどのように得ているかに関心を持つ。
対象となる学年目安
小学校低学年~高学年
準備物
- 白い壁や広い空間(何もない場所が望ましい)
- 定規(30cm程度)
- ペンや色鉛筆など、細長いもの(目立つ色だとより良い)
- 記録用紙(任意。方眼紙など)
- アイマスクや手で目を隠すためのもの(任意)
活動の手順
- 立つ位置を決める: 壁から50cm~1mほど離れて立ちます。壁がない広い場所で行う場合は、目印となる一点(柱や壁の模様など)を決めます。
- 視点を固定する: 正面にある壁の真ん中あたり、または決めた目印の一点に視線を固定します。この一点は、アクティビティが終わるまで絶対に動かさないようにします。
- 片目で視野を測る(例:右目):
- 左目を手やアイマスクでしっかり隠します。
- 右目は正面の一点をしっかりと見つめたままにします。
- もう一方の手に持ったペンを、体の横(例えば右側)からゆっくりと内側(体の中央方向)に動かしていきます。
- ペンが「見えた!」と気づいたところで動きを止めます。ペンそのものがはっきり見える必要はありません。色や形など、「何かがある」と認識できた点で構いません。
- ペンを持った手と、体の中心との角度や、壁のどのあたりで見えたかを確認・記録します。(壁を使う場合は、見えた位置に軽く印をつけると良いでしょう)
- 同じように、左側、上側、下側からもペンを動かして、見え始めた点を調べます。
- 片目で視野を測る(もう片方の目): 手順3を、もう片方の目(例:左目)でも行います。右目を隠して左目で正面の一点を見つめ、左右上下からペンを動かして見え始める点を調べます。
- 両目で視野を測る:
- 今度は両目を開けたまま、正面の一点をしっかりと見つめます。
- 手順3と同じように、左右上下からペンを動かして、見え始めた点を調べます。
- 結果を比較する: 片目ずつで見たときの結果と、両目で見たときの結果を比べてみましょう。どの方向が一番広く見えたか、両目だと片目よりどれくらい広く見えるかなどを話し合います。
活動のポイント
- 視点を動かさない!: これが最も重要です。ついついペンの方に視線が動いてしまいがちなので、「石になったつもりで、目は一点をじっと見ててね」などと声かけをしましょう。
- 「見えた!」の基準: 「はっきり見えた」ではなく、「何かあると気づいた」点を基準にすると、視野の端の方まで調べやすくなります。
- ペアで実施: 一人が視点を固定し、もう一人がペンを動かす役割を交代で行うと、よりスムーズに進められます。ペンを動かす人は、相手の目の端で「見えた?」と確認しながらゆっくり動かしましょう。
- 周りのものがどう見えるか: ペンを動かしているとき、視点を固定している中心ははっきり見えますが、端の方で見えるペンはぼんやりしていることに気づかせましょう。これは、目の中心と端で、ものを見る能力が違うためです。
- 横方向の視野: 人間の目は顔の正面についているため、特に横方向の視野が広くできています。横方向を中心に試してみると、視野の広さを実感しやすいでしょう。
安全上の注意点
- ペンを顔に近づけすぎたり、目に刺さったりしないよう、周りの大人が注意して見守ってください。
- 夢中になりすぎて、周りの人や物にぶつからないよう、広い場所で行いましょう。
- 一点を長時間見つめすぎると目が疲れることがあります。適度に休憩を挟みましょう。
- 無理に視野を広げようと目をきょろきょろさせないよう、最初にルール(視点を動かさないこと)をしっかり伝えましょう。
期待される教育効果
このアクティビティを通して、子供たちは以下のことを体験的に学びます。
- 視野の概念理解: 自分の目が見ている範囲が、真正面だけでなく思ったよりも広いことに気づきます。
- 中心視と周辺視: 視点を固定した一点ははっきり見え、端の方はぼやけて見えるという体験を通して、ものの見え方が場所によって違うことを感じ取ります。これは、網膜にある視細胞の分布の違いによるものです。
- 両目の役割: 片目ずつで見たときよりも、両目で見たときの方が視野が広いことを実感します。また、両目で見ることで、立体的にものを見たり、距離感をつかんだりする能力が高まることにもつながることを伝えることができます。
- 身体への興味: 自分の目という身近な器官にどんな機能があるのか、それが日常生活や様々な活動(スポーツなど)にどう役立っているのかに関心を持つきっかけになります。
応用例や発展的な活動
- 記録をつけてみる: 見え始めた点を簡単な図(円グラフなど)に記録してみましょう。片目と両目の視野を同じ図に書き込んで比較すると、違いがより分かりやすくなります。
- 他の動物の視野を調べる: 鳥は左右に目がついているものが多く、人間よりずっと広い視野を持つ一方、立体視が苦手なものが多いです。猫やフクロウのように、人間に近い位置に目がついている動物の視野や、それが生活にどう役立っているかを調べてみましょう。
- 色つきのペンで試す: 色の認識は、視野の端の方では難しくなることがあります。様々な色のペンで試してみるのも面白いでしょう。
まとめ
今回の活動で、自分の視野が思っていたよりもずっと広い範囲をカバーしていることに気づいたことと思います。そして、両目が協力することで、私たちはさらに広い範囲を見たり、奥行きを感じたりしながら、安全に、そして豊かに世界を認識していることが分かります。
私たちの体には、今回探検した「視野」の他にも、まだまだたくさんの不思議な仕組みが隠されています。ぜひ、色々なアクティビティを通して、自分の体のことをもっと知る探検を続けてみてください。