両目で見るとどうして物が立体に見えるの?目のふしぎを探検!
「目のふしぎ探検隊」、今回のテーマは「立体視」です。私たちは普段、物の形や色、動きだけでなく、「遠さ」や「奥行き」も感じながら生活していますね。この「遠さ」や「奥行き」を感じる働きの一つに、「両目で見ること」が深く関わっています。
なぜ両目で見ると、目の前の世界が立体的に見えるのでしょうか?片目では立体に見えないのでしょうか?簡単なアクティビティを通して、このふしぎに迫ってみましょう。
アクティビティの目的
この活動を通して、私たちは主に以下のことを学びます。
- 両目で見ることによって、物の「遠さ」や「奥行き」を感じやすくなることを体験的に理解する。
- 立体視の仕組みが、私たちの日常生活でいかに重要であるかに気づく。
- 視覚の多様な働きに対する興味や関心を高める。
対象となる学年目安
小学校中学年〜高学年
準備物
特別な準備物は必要ありません。いつもの場所(教室、リビングなど)で行えます。 もしあれば、以下のものを用意すると、より具体的に体験できます。
- 鉛筆やペンなど、細長いもの:人数分またはグループに1〜2本
- 空のコップと水、または糸と大きめのビーズ:各1つまたはグループに1つ
活動の手順
さあ、「立体視」のふしぎを探検する旅に出かけましょう!
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両目で見ている世界を感じてみよう:
- まず、両目を開けたままで、周りの景色や目の前の物を見てみましょう。「遠いな」「近いな」「この箱は奥行きがあるな」など、どのように見えているか感じてみます。
- 先生や保護者の方は、「机の上にある消しゴムは、ノートより手前にあるかな?」「遠くの窓の外の木は、どのくらいの距離にあるように見える?」などと声かけをし、子供たちが普段感じている「遠さ」や「奥行き」に意識を向けさせましょう。
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片目と両目の見え方の違いを体験しよう(体験1:指さしチャレンジ):
- 好きな高さに鉛筆を体の前で立てて持ちます。(利き手でなく、逆の手で持つ方が難しいかもしれません。)
- もう一方の手の人差し指を立て、目を閉じてから、持っている鉛筆の先端をめがけて人差し指をまっすぐ伸ばし、当ててみましょう。目を開けるのは、指を伸ばしきった後です。うまく当たりましたか?
- 次に、片目を閉じて、もう一度同じように鉛筆の先端をめがけて人差し指を伸ばしてみましょう。どうでしたか?両目の時と比べて、当てにくく感じましたか?
- 最後に、両目を開けて、もう一度試してみましょう。どうでしたか?一番当てやすく感じたのはいつでしたか?多くの人は、両目の時が一番当てやすいと感じるはずです。
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片目と両目の見え方の違いを体験しよう(体験2:日常動作チャレンジ - 任意):
- 机の上に空のコップを置きます。片目を閉じて、そのコップに水を注いでみましょう。水の勢いを調節しながら、コップの縁にこぼさないように入れるのは簡単ですか?
- 次に、両目を開けて同じようにコップに水を注いでみましょう。どうでしたか?片目の時と比べて、水の流れとコップの縁の関係がつかみやすく感じましたか?
- (または)糸と大きめのビーズを用意します。片目を閉じて、糸の先にビーズの穴を通してみましょう。次に、両目を開けて同じように通してみましょう。どちらが簡単に感じましたか?
- これらの体験を通して、片目では物の正確な位置関係や距離感が掴みにくい場合があることに気づかせます。
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どうして両目だと立体に見えるの?仕組みを知ろう:
- 子供たちに、体験を通して「片目より両目の方が、物の位置や距離が分かりやすかった」「立体的に見えた」と感じたことを発表してもらいます。
- ここで、その理由を分かりやすく説明します。「私たちの二つの目は、鼻を挟んで少し離れた位置についています。だから、右目と左目は、同じ物でも少しだけ違う角度から見ています。脳は、この少しずれた二つの目の情報を受け取って、『この物はこれくらいの距離にあるな』とか、『これは手前、あれは奥にあるな』という判断をしています。ちょうど、少しずれた二枚の写真を見せると立体に見えるのと同じような仕組みです。」といったように、専門用語を避けたり、比喩を使ったりして解説します。「この、両目で見ることによって奥行きや立体感を感じる働きを『立体視(りったいし)』といいます。」と用語も紹介します。
- 体験1(指さし)や体験2(水注ぎ、ビーズ通し)は、この立体視の働きによって、目標物と自分の指(または水や糸)との正確な距離や位置関係を掴むのが容易になるため、成功しやすくなることを伝えます。
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まとめ:
- 今日の探検で分かったことを振り返ります。「両目があることで、私たちは世界を立体的に見ることができる」「立体的に見えることで、物を掴んだり、歩いたり、スポーツをしたり、安全に生活することができる」など、立体視が私たちの生活を豊かにし、安全を守っている大切な働きであることを確認します。
活動のポイント
- 体験1の指さしチャレンジは、子供たちが「当たった!」「当たらなかった!」と結果がはっきり分かるため、興味を持って取り組みやすいです。最初は簡単な距離で試し、慣れてきたら少し遠くにしたり、持っている鉛筆を揺らしたりするなど、難易度を調整してみましょう。
- 仕組みの説明では、難しい言葉は使わず、「少しずれて見える」「脳が合わせている」といった感覚的な言葉で伝えましょう。遠近法などの絵画技法や、写真の話と関連付けるのも良いかもしれません。
- 立体視がうまくいかない例(例えば、極端に両目の視力が違う場合など)に触れることで、視力の大切さや目の健康についても考えるきっかけにできますが、特定の子供への配慮は十分に行いましょう。
安全上の注意点
- 目を強く閉じたり、押したりしないように注意してください。
- 体験中に周りの人にぶつかったりしないよう、十分なスペースを確保して行いましょう。特に、指さしチャレンジでは、指を伸ばす方向を確認し、他の人や物に当たらないように気をつけましょう。
期待される教育効果
このアクティビティを通じて、子供たちは自分たちの目が単に「見える」だけでなく、二つの目の連携によって「奥行きを感じる」という高度な働きをしていることを実感できます。これにより、体の仕組みに対する探求心や、視覚の不思議への興味が深まることが期待されます。また、普段意識しない体の働きに目を向けることで、自分の体を大切にしようという気持ちにも繋がるでしょう。
応用例や発展的な活動
- 立体視を利用したアート: 両目で見たときに立体的に見える不思議な絵(ステレオグラムなど)を観察してみましょう。どうして立体に見えるのか、今日の学びと結びつけて考えてみます。
- 3Dメガネの原理: 映画館などで使う3Dメガネが、両目に違う映像を見せることで立体感を作り出していることを紹介し、立体視の原理が技術にも応用されていることを学びます。
- 動物の目の位置: 草食動物は目が顔の横についていて視野が広いこと、肉食動物は目が顔の前についていて立体視が得意なことなど、動物の目の位置と生活様式の関連を調べる活動に発展させることもできます。
「両目で見ると世界が立体的に見える」、この当たり前のように感じていることも、実は私たちの目が持つ素晴らしい機能の一つです。今回の探検を通して、子供たちが自分たちの体のふしぎにさらに興味を持ち、身の回りの世界を見る目が少し変わることを願っています。