どうして倒れないの? 重心とバランスのふしぎを探検!
どうして倒れないの? 重心とバランスのふしぎを探検!
私たちは普段、意識することなく立ったり座ったり、歩いたり走ったりしています。これらはすべて、体がバランスを上手に取っているからです。では、なぜ私たちは倒れずにバランスを取ることができるのでしょうか?その秘密の一つに「重心」というものがあります。
このアクティビティでは、簡単な体験を通して、体の重心がバランスにどのように関わっているのかを探検します。難しい知識は必要ありません。自分の体と身の回りのものを使って、体の不思議を感じてみましょう。
アクティビティの目的
- 体の「重心」という考え方を理解する。
- バランスを取る際に重心の位置が重要であることを体験する。
- 自分の体の感覚に意識を向け、体の仕組みに興味を持つ。
対象となる学年目安
小学校中学年〜高学年
準備物
- 特別なものは必要ありません。
- 壁(平らで安全な場所)
- 椅子(背もたれがあるものが望ましい)
- 筆記用具(鉛筆など、まっすぐな棒状のものなら何でも可)
- (必要に応じて)広い場所
活動の手順
このアクティビティはいくつかの短い体験で構成されています。それぞれの手順に従って行ってみましょう。
体験1:壁と友だち! 重心を感じてみよう
- 壁に背中をぴったりつけて立ちます。かかと、お尻、背中、頭を壁につけるように意識しましょう。
- そのままの姿勢で、右足を壁から少し離れた場所に、つま先が少し壁から離れるくらいの位置に出してみましょう。(無理のない範囲で)
- この時、体を壁につけたまま前にかがもうとしてみてください。どうなりますか? 体を壁につけたままでは前にかがむのが難しいことに気づくでしょう。
- 次に、壁から少し離れて立ちます。
- 同じように右足を少し前に出してから、前にかがんでみてください。今度は簡単にかがむことができますね。
体験2:椅子に座って、立ち上がってみよう
- 背もたれのある椅子を用意し、深く腰掛けます。
- 背中を椅子の背もたれにぴったりつけたまま、立ち上がってみてください。(お腹を背もたれにつけるイメージ)どうでしょうか? ほとんどの人が立ち上がれないか、非常に難しいと感じるはずです。
- 次に、椅子に浅く腰掛けたり、背中を背もたれから離したりして、立ち上がってみてください。今度は簡単に立ち上がることができますね。
体験3:鉛筆を立ててみよう
- 鉛筆などのまっすぐな棒状のものを用意します。
- 利き手の指(人差し指など)の上に、鉛筆を立ててみましょう。
- 鉛筆が倒れないように、指を少し動かしてバランスを取ってみてください。
活動のポイント
- 重心とは? 体験を通して、なぜ壁に背中をつけたままではかがみにくいのか、椅子に深く座ったままでは立ち上がりにくいのかを考えてみましょう。私たちの体には、体全体の重さが一点に集まっていると見なせる場所があります。これを「重心」と呼びます。立っているときや座っているとき、体の動きに合わせて重心の位置も常に少しずつ移動しています。 体験1では、壁に背中をつけた状態では、重心を足の上に乗せることが難しいため、前に倒れそうになってしまいます(または倒れないように体が反射的に抵抗します)。壁から離れると、重心を足の上に移動させてかがむことができます。 体験2では、椅子に深く座った状態では、重心が椅子の上にあり、立ち上がるために必要な「重心を足の上に移す」動きができないため、立ち上がりにくいのです。 体験3では、鉛筆が倒れないのは、鉛筆の重心が指の真上にある(または指で支えられている)間だけです。私たちの体も同じで、足の裏など、体を支えている面(これを「支持基底面」と呼びます)の上に重心がある限り、倒れずにいられます。
- 子供への声かけ
- 「壁に背中をつけたまま、前に倒れないように立ってみて。どう感じる?」
- 「椅子に座ったまま、お腹を背もたれにつけたまま立ち上がれるかな? なぜ難しいんだろう?」
- 「鉛筆が立っているのは、指のどこで支えている時かな?」
- 「歩くときや走るとき、体はどんなふうにバランスを取っているのかな?」
- 観察させる点
- 体験1で、体を壁につけたまま前にかがもうとしたときの体の感覚(倒れそうになる、踏ん張る)。
- 体験2で、立ち上がるために体が自然と前に傾く動き。
- 体験3で、鉛筆を立てるために指をどのように動かしているか。
- 日常生活の中で、自分がバランスを取っていると感じる瞬間(階段、自転車、片足立ちなど)。
安全上の注意点
- 体験1、2を行う際は、転倒しないように周りに何もない広い場所で行いましょう。無理な姿勢をさせないでください。
- 椅子は安定したものを使用し、勢いよく立ち上がったり座ったりしないように注意しましょう。
- 体験3で鉛筆を立てる際は、鉛筆の先で怪我をしないように注意しましょう。
- これらのアクティビティは、大人が必ずそばで見守り、安全を確認しながら行ってください。
期待される教育効果
このアクティビティを通して、子供たちは「重心」という抽象的な概念を、自分の体の感覚を通して具体的に捉えるきっかけを得られます。なぜ私たちは倒れずにいられるのか、バランスを取るには何が必要なのかといった問いに対して、体の仕組みと物理的な原理が結びついていることを体験的に理解できます。これにより、自分の体に対する関心が高まり、日常生活における体の動きやバランスにも意識を向けるようになるでしょう。
応用例や発展的な活動
- 色々な姿勢で重心を感じてみる: 片足立ち、しゃがむ、寝るなど、様々な姿勢で体のどこに重心があるか、あるいは体の支え(支持基底面)がどこにあるかを意識してみる。
- 物の重心を探す: 厚紙で作った人の形や、様々な形の物に糸をつけてぶら下げ、重心を探す実験を行う。複数の方向からぶら下げて、糸の延長線が交わるところが重心になることを学ぶ。
- バランスゲーム: バランスストーンや一本橋など、バランス感覚を使う遊びを通して、無意識に行っている体のバランス調整の仕組みを体験的に学ぶ。
私たちの体は、重心をうまくコントロールすることで、様々な動きを可能にしています。今回の探検を通して、体のバランス機能の素晴らしさを感じてもらえたら嬉しいです。